おばけ昔話/旅は道づれ

昔、一人の侍が京へ向かう旅の途中、鈴鹿山の寂しい林の中で、人の話声を耳にして足を止めました。不思議に思いながらあたりを見回しても、誰一人いません。これは鈴鹿の山にいると言われる山賊かもしれないと用心した侍が、林を抜けて一本道をしばらく行く…

おばけ昔話/百目

ある春の日暮れの時のことです。人里離れた山道を一人の商人(あきんど)が心細そうに先を急いでいると、誰か前を行く者がいます。道連れができたと喜んで商人がその男に追いついて声をかけると、振り向いた男は、なんと両目ともかたくふさがった盲でした。商…

おばけ昔話/ろくろう首

昔、昔、江戸の境町は、たくさんの芝居小屋が立ち並んで、それは賑やかな所でした。それぞれの小屋には人気役者の絵看板が張り出されていて、見とれて立ち止まる人のかたまりがあちこちにできています。そんな中を、一人の綺麗な町娘が、下駄の鈴を鳴らしな…

おばけ昔話/棺の中のかま

昔、平太郎という肝っ玉の太い若者が、婆さまと二人で暮らしていました。 ある晩のことです。村の若者が寄り集まって、肝試しを競い合い、少々のことでは飽き足らなくなった一人の若者が、焼き場のお堂に一晩置き去りにされている棺の中から、死人が魔除けの…