おばけ昔話/棺の中のかま

昔、平太郎という肝っ玉の太い若者が、婆さまと二人で暮らしていました。

ある晩のことです。村の若者が寄り集まって、肝試しを競い合い、少々のことでは飽き足らなくなった一人の若者が、焼き場のお堂に一晩置き去りにされている棺の中から、死人が魔除けの呪いに抱いている鎌を取ってくることを提案しました。でも、言い出した若者も他のみんなも、自分のこととなると尻ごみをして、なんのかのと言い訳をします。それどころか、日頃肝の太さを自慢している平太郎をおだてたり意地悪くたきつけ始めましたので、『よーし、わかった。この平太郎が見事やりとげてみせよう』と、ぶ厚い胸をばんと叩いて立ち上がった平太郎は、いかにも自信有り気な様子で出かけました。

焼き場のお堂に着いた平太郎は、暗がりの中で目当ての棺を探しあてると、さすがにぞくぞくしながら棺のふたを開けて、死人の胸から鎌を奪い取り、外へ飛び出しました。するとどうしたことか、辺りがにわかに明るくなり、生臭い風といっしょに平太郎の名を呼ぶ化け物の声が聞こえてきました。平太郎が、そばの松の木に登って様子を伺うと、麓の方から提灯を灯した葬式の行列がやってくるのが見えます。それも、口々に、『平太郎ぉー、おまえの婆さまが死んだぞー』と叫んでいます。平太郎が、『化かされてたまるか』とニヤニヤしながらのぞいていると、行列は焼き場の前で棺から婆さまそっくりの死人を出して、積み上げられた薪の上にのせると、火をつけて帰って行きました。平太郎が松の木から降りようとすると、急に炎🔥がまいあがり、死体がむっくりと身体を起こして平太郎の方を見上げました。なんと口が耳まで裂けた化け物です。平太郎がすごい形相で木をよじ登ってくる化け物めがけて鎌を振り下ろすと、ギャ〜っという断末魔の声がしたきり静かになりました。翌朝、お堂に、首に鎌を突き立てたでっかいむじなの死体があったということです。

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